単純温泉
タイプ1 =刺激が少ない・優しい湯/別名「神経の湯」「脳卒中の湯」溶存物質が 1,000 mg/kg 未満 で泉温25℃以上。成分が薄いから刺激が弱く、家族・高齢者・病後の人にも安心。pH 8.5以上だと「アルカリ性単純温泉」となり、肌がつるつるになる「美人の湯」。
浴用適応症
自律神経不安定症、不眠症、うつ状態
飲用適応症
なし(一般禁忌のみ)
代表温泉地
下呂・道後・鬼怒川・修善寺・湯田中・由布院・水上 ほか
ONSEN SOMMELIER NOTE
温泉巡りをもっと楽しくするための、知識の整理ノートです。
温泉ソムリエ認定講座テキストの内容を、「成分表を見て、自分の体に合うかを判断できる」ことをゴールに再構成しました。
温泉の種類
10+2
主要泉質
分類の軸
4軸
泉質・温度・pH・浸透圧
分析書チェック項目
28
読み解きポイント
EVENT — 2026.5.30 〜 6.12
歡迎光臨 台湾北投 in 秩父
西武秩父駅前温泉「祭の湯」で、北投温泉博物館との文化交流展を開催中
NEW
温泉カルテを作る
手元の成分表をアップ → 効能・適応症・体感ポイントをAIが解説
CHAPTER 1
日本では「温泉」と「療養泉」は別の概念です。温泉法(昭和23年)で「温泉」が、その下位概念として「療養泉」が定義されています。療養泉の条件を満たして初めて「適応症」(=効能)を名乗ることができます。
次のどちらかを満たせば「温泉」を名乗れる。
つまり「冷たくても温泉」「ほぼ真水でも温泉」がありえる。法律上の最低ラインが緩い。
効能(適応症)を掲示できるレベルの温泉。条件は厳しい。
分析書に「○○泉」と泉質名がついていたら、療養泉=効能を名乗れる温泉。
ポイントは、療養泉は「温泉」の上位互換だということ。
すべての療養泉は温泉ですが、すべての温泉が療養泉になるわけではありません。
試料1kg中(mg/kg)の含有量がこれを超えると条件を満たします。
右端の「倍率」を見ると、療養泉だけ厳しくなる成分がパッと分かります。
| 成分 | 温泉 | 療養泉 | 倍率 |
|---|---|---|---|
| 溶存物質(ガス性のものを除く) | 1,000 mg/kg | 1,000 mg/kg | 1× |
| 遊離二酸化炭素 (CO₂) | 250 mg/kg | 1,000 mg/kg | 4× |
| 水素イオン (H⁺) | 1 mg/kg | 1 mg/kg | 1× |
| 総鉄イオン (Fe²⁺+Fe³⁺) | 10 mg/kg | 20 mg/kg | 2× |
| よう化物イオン (I⁻) | 10 mg/kg | 10 mg/kg | 1× |
| 総硫黄 (HS⁻+S₂O₃²⁻+H₂S) | 1 mg/kg | 2 mg/kg | 2× |
| ラドン (Rn) | 20 × 10⁻¹⁰ Ci/kg (74 Bq/kg) | 30 × 10⁻¹⁰ Ci/kg (111 Bq, 8.25マッヘ) | 1.5× |
| リチウム / マンガン / フッ素 / メタケイ酸 ほか | 各規定値あり(全19成分) | — | — |
注目:療養泉だけ規定値が厳しくなるのは CO₂・鉄・硫黄・ラドン の4つ。
いずれも 「体への効きが強い成分」(二酸化炭素泉・含鉄泉・硫黄泉・放射能泉)です。
→「ちょっと含まれていれば温泉として名乗れるが、効能を謳うならもっと濃く入っていてね」というロジック。
※ 平成26年改正以降、「含アルミニウム泉」「含銅泉」は廃止され、療養泉は10種類に整理された。
環境省「温泉利用状況」(令和6年3月末現在)の最新統計から。
温泉地
2,879
地区
源泉
27,932
本
うち 25℃以上
17,000+
≒ 療養泉候補
25℃未満(冷鉱泉)
3,717
本
「療養泉そのものの数」は環境省統計では明示されていませんが、25℃以上の源泉(約1.7万本)の大半は療養泉に該当します。
25℃未満(冷鉱泉)でも7成分の規定値を満たせば療養泉になります。
→ ざっくり 全源泉の6〜7割(推定 1.8〜2.0万本)が療養泉と考えてよさそう。日本は世界有数の療養泉大国。
CHAPTER 2
どんな温泉にも、必ず4つのタグがつきます。泉質・泉温・液性(pH)・浸透圧。これを覚えれば、分析書の冒頭1行で温泉の正体が9割わかります。
AXIS 1 — 化学組成
何が溶けているかで決まる。10種類の正式名称。
AXIS 2 — 温度
源泉そのものの温度(湯船の温度ではない)。
AXIS 3 — pH
肌触りを決める軸。pH 7.5 以上でツルツル=美肌効果。
参考:胃液 pH 1〜2 / 中性洗剤 pH 7 / セメント pH 13
AXIS 4 — 濃さ
どれだけ濃いか。濃い湯ほど成分が肌に染み込みやすいが、湯あたりもしやすい。
高張性は短時間で十分。長湯禁物。
→ ① 泉質: ナトリウム塩がメインの「塩化物泉」 → 保温力◎、「熱の湯」
→ ② 浸透圧: 低張性 → 体液より薄め、長湯OK
→ ③ 液性: 中性 → 肌に優しい
→ ④ 泉温: 高温泉 → 加水加温なしでそのまま入れる
→ 一行で 「優しめだけど保温力ある、メインで温まる湯」 と読める。
CHAPTER 3
平成26年改正後の正式な泉質は10種類。それぞれに「キャラクター」があります。「自分はこの泉質が好き」が見つかると温泉巡りが一気に深くなります。
溶存物質が 1,000 mg/kg 未満 で泉温25℃以上。成分が薄いから刺激が弱く、家族・高齢者・病後の人にも安心。pH 8.5以上だと「アルカリ性単純温泉」となり、肌がつるつるになる「美人の湯」。
浴用適応症
自律神経不安定症、不眠症、うつ状態
飲用適応症
なし(一般禁忌のみ)
代表温泉地
下呂・道後・鬼怒川・修善寺・湯田中・由布院・水上 ほか
塩化物イオンが主成分。塩のコーティング効果で保温力が抜群、湯冷めしにくい。塩分が傷に染みるが殺菌・保湿効果あり。三大美人泉質の1つ(保湿系)。飲用は胃を温め慢性消化器病に。高血圧・腎臓病の人は飲用NG。
浴用適応症
きりきず、末梢循環障害、冷え性、皮膚乾燥症、うつ状態
飲用適応症
慢性消化器病、便秘、萎縮性胃炎
代表温泉地
熱海・城崎・指宿・有馬・片山津・皆生・三朝・登別 ほか
重曹分が皮膚の油分を分解 →クレンジング効果でツルツルに。三大美人泉質の1つ(クレンジング系)。湯上がりは肌の水分が蒸発しやすいので保湿剤を併用。飲用で胃酸を中和、糖尿病・痛風にも。マグネシウム型は便秘にも有効。
浴用適応症
きりきず、末梢循環障害、冷え性、皮膚乾燥症
飲用適応症
胃十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、糖尿病、痛風(飲用)
代表温泉地
嬉野・小谷・川根・東鳴子・湯の川 ほか
硫酸イオンが血管を拡張、血圧降下作用。三大美人泉質の1つ(仕上げ系:肌のハリ・弾力)。カルシウム型は鎮静、ナトリウム型(芒硝泉)は脳卒中、マグネシウム型(正苦味泉)は動脈硬化に。飲用で胆汁分泌促進・便秘解消。
浴用適応症
きりきず、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症
飲用適応症
胆道系機能障害、高コレステロール血症、便秘
代表温泉地
山中・伊香保・四万・玉造・天童・金田一・法師 ほか
湯に入ると体に細かい泡がびっしりつく。気泡が皮膚から吸収され血管を拡張、低い湯温でも血流を良くし血圧を下げる。日本では稀少。34〜37℃のぬる湯で長湯が基本。湯に溶けにくいガスのため、加温・湧出元から距離があると効果が落ちる。
浴用適応症
きりきず、末梢循環障害、冷え性、自律神経不安定症
飲用適応症
胃腸機能低下
代表温泉地
長湯・湯屋・泡の湯・大塩・大丸・吉川 ほか
空気に触れると鉄が酸化して赤褐色(鉄錆色)に。湧出直後は無色透明。月経障害・更年期障害・冷え性に。飲用で鉄分補給 → 鉄欠乏性貧血に。
浴用適応症
なし(一般適応症のみ。月経障害は旧基準で記載)
飲用適応症
鉄欠乏性貧血
代表温泉地
有馬・伊香保・長湯・小坂・滝の湯・有明 ほか
温泉らしい独特の硫化水素臭。色は乳白色〜エメラルドグリーン。皮膚病・慢性婦人病・糖尿病に効くが刺激が強く、湯あたりしやすい。心臓・血管に作用するため高血圧にも。金属を腐食させるので時計や指輪は外す。
浴用適応症
アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、慢性湿疹(糖尿病)、表皮化膿症
飲用適応症
糖尿病、高コレステロール血症
代表温泉地
登別・万座・月岡・草津・野沢・蔵王・酸ヶ湯 ほか
pH が低い(酸性度が高い)。強い殺菌力で水虫・皮膚病に効く。肌がピリピリし、敏感肌・高齢者・乾燥肌の人には不向き。湯上がりは真水でかけ湯を。
浴用適応症
アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、糖尿病性湿疹、表皮化膿症
飲用適応症
慢性消化器病、便秘
代表温泉地
草津・玉川・蔵王・須川・嶽・酸ヶ湯・川湯・万座 ほか
ラドン(気体)を含む。「ホルミシス効果」と呼ばれる微量放射線による免疫活性が言われる。ラドンは半減期3.82日と非常に短いため、湧き出した温泉でしか効果を得られない稀少な泉質。痛風・関節リウマチ・強直性脊椎炎に。
浴用適応症
高尿酸血症(痛風)、関節リウマチ、強直性脊椎炎など
飲用適応症
なし
代表温泉地
三朝・有馬・増富・村杉・池田・恵那ラジウム ほか
よう素は甲状腺ホルモンの主原料で、新陳代謝を促進。コレステロールを下げる作用も。甲状腺機能亢進症の人は禁忌。色は黄色〜茶色、長期保存で褐色化(「経年変化」する珍しい泉質)。
浴用適応症
なし
飲用適応症
高コレステロール血症
代表温泉地
新津・大沢・白子・有明天空・両神 ほか
CHAPTER 4
平成26年(2014年)7月1日改定の泉質別適応症 早見表。「自分の症状はどの泉質に効くか」を逆引きできます。
全泉質に共通する 「一般的適応症」 もあります(疲労回復、健康増進、自律神経不安定症、不眠症、うつ状態など)。
| 適応症 | 単純 | 塩化物 | 炭酸水素 | 硫酸塩 | CO₂ | 含鉄 | 硫黄 | 酸性 | 放射能 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| きりきず | — | ○ | ○ | ○ | ○ | — | — | — | — |
| 末梢循環障害 | — | ○ | ○ | ○ | ○ | — | — | — | — |
| 冷え性 | — | ○ | ○ | ○ | ○ | — | — | — | — |
| 皮膚乾燥症 | — | ○ | ○ | ○ | — | — | — | — | — |
| うつ状態 | ○ | ○ | — | ○ | — | — | — | — | — |
| 自律神経不安定症 | ○ | — | — | — | ○ | — | — | — | — |
| 不眠症 | ○ | — | — | — | — | — | — | — | — |
| アトピー性皮膚炎 | — | — | — | — | — | — | ○ | ○ | — |
| 尋常性乾癬 | — | — | — | — | — | — | ○ | ○ | — |
| 表皮化膿症 | — | — | — | — | — | — | ○ | ○ | — |
| 慢性湿疹(糖尿病) | — | — | — | — | — | — | ○ | — | — |
| 高尿酸血症(痛風) | — | — | — | — | — | — | — | — | ○ |
| 関節リウマチ | — | — | — | — | — | — | — | — | ○ |
| 強直性脊椎炎 | — | — | — | — | — | — | — | — | ○ |
| 適応症 | 単純 | 塩化物 | 炭酸水素 | 硫酸塩 | CO₂ | 含鉄 | 硫黄 | 酸性 | よう素 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 慢性消化器病 | — | ○ | — | — | — | — | — | ○ | — |
| 便秘 | — | ○ | — | ○ | — | — | — | ○ | — |
| 胃十二指腸潰瘍 | — | — | ○ | — | — | — | — | — | — |
| 逆流性食道炎 | — | — | ○ | — | — | — | — | — | — |
| 糖尿病 | — | — | ○ | — | — | — | ○ | — | — |
| 高コレステロール血症 | — | — | — | ○ | — | — | ○ | — | ○ |
| 胆道系機能障害 | — | — | — | ○ | — | — | — | — | — |
| 胃腸機能低下 | — | — | — | — | ○ | — | — | — | — |
| 鉄欠乏性貧血 | — | — | — | — | — | ○ | — | — | — |
※ 飲用は保健所からの飲用許可がある温泉でのみ可能。許可がない場合は飲まないこと。
CHAPTER 5
「美人の湯」は俗称で、明確な基準はないが、教本では 3つの効果系統 として整理されています。役割の違う3つを 湯巡りで組み合わせる のが理想。
クレンジング系
炭酸水素塩泉 または pH 7.5以上の弱アルカリ性〜アルカリ性単純温泉。重曹分・アルカリが角質を分解 → ツルツル。
※ 落とし穴:保湿剤や塩化物泉を後で「仕上げ」に入らないと乾燥する
保湿系
塩化物泉。塩のコーティング効果で水分蒸発を防ぐ。湯上がりタオルで強く拭かない。
クレンジング後の「仕上げ湯」として最強
仕上げ系
硫酸塩泉。肌を引き締めるアンチエイジング効果。
「ハリ」「弾力」を感じたいときに
CHAPTER 6
各温泉施設の脱衣所に必ず掲示されている「温泉分析書」。次の10ポイントを順に確認すれば、その温泉の正体がほぼわかります。
「ナトリウム-塩化物泉(低張性・中性・高温泉)」のように、最初の1行に 泉質+浸透圧+液性+泉温 が並ぶ。ここで温泉の人格が決まる。
源泉温度。25℃未満なら冷鉱泉で加温前提=循環濾過の可能性が高い。42℃を超えていれば「加水・加温なしで入れる」プレミアム源泉。
「100リットル/分」が 1日100名分 の入浴を新鮮に提供できる目安。少ないと循環、多いと「源泉かけ流し」が可能。
pH 7.5 以上 → 美肌効果あり。10を超えるとキュッキュッ感。pH 3未満は強酸性で殺菌力◎だが肌刺激も強い。
高張性は短時間でも 湯あたりしやすい。長湯禁物。低張性は逆に長く入れる。
1,000 mg/kg 未満 → 単純温泉、以上 → 塩類泉。10g/kg以上なら高張性で濃い。125〜250mg/kg程度なら塩素泉として薄めの「優しい」湯。
20 mval% 以上の成分が泉質名に入る。Na⁺多めなら「保湿・しっとり」、Ca²⁺多めなら「鎮静」、Mg²⁺多めなら「動脈硬化予防」、HCO₃⁻多めなら「ヌルヌル」。
これらが規定値を超えると 「含○○-××泉」 と泉質名に追加される。鉄(II)が10mg/kg以上で含鉄、総硫黄2mg以上で硫黄泉、CO₂が1,000mg以上で二酸化炭素泉。
浴用・飲用 それぞれの 「一般的適応症」「泉質別適応症」 と、「一般的禁忌症」「泉質別禁忌症」 が並ぶ。妊娠中(特に初期と末期)は2014年改正で禁忌から除外。
この5項目は掲示義務。「加水あり」+「加温あり」を同時に行っているなら、温泉の供給量が不足している=かなりの加水で「水増し」の可能性。
CHAPTER 7
実際の温泉分析書を一緒に読み解きます。下の見本に 1 〜 7 の番号タグを打ったので、第6章の10ポイントと照合しながら追ってください。
最後に「この温泉は何者か?」を3行でまとめます。
1. 分析申請者
2. 源泉名及び湧出地
3. 湧出地における調査及び試験成績
4. 試験室における試験成績
5. 試料1kg中の成分・分量及び組成
(イ)陽イオン4
| 成分 | mg | mval | mval% |
|---|---|---|---|
| ナトリウムイオン (Na⁺) | 95.5 | 4.15 | 22.88 |
| カリウムイオン (K⁺) | 3.42 | 0.09 | 0.48 |
| マグネシウムイオン (Mg²⁺) | 0.20 | 0.02 | 0.09 |
| カルシウムイオン (Ca²⁺) | 278 | 13.90 | 76.55 |
| 鉄(II)イオン (Fe²⁺) | <0.01 | 0.00 | 0.00 |
| マンガンイオン (Mn²⁺) | 0.10 | 0.00 | 0.00 |
| アルミニウムイオン (Al³⁺) | <0.05 | 0.00 | 0.00 |
| 陽イオン計 | 377 | 18.2 | 100 |
(ロ)陰イオン5
| 成分 | mg | mval | mval% |
|---|---|---|---|
| ふっ化物イオン (F⁻) | 0.7 | 0.04 | 0.21 |
| 塩化物イオン (Cl⁻) | 113 | 3.19 | 17.67 |
| 硫酸イオン (SO₄²⁻) | 699 | 14.6 | 80.74 |
| 炭酸水素イオン (HCO₃⁻) | 15.3 | 0.25 | 1.38 |
| 陰イオン計 | 828 | 18.1 | 100 |
(ハ)遊離成分
非解離成分
| メタケイ酸 (H₂SiO₃) | 40.1 mg |
| メタホウ酸 (HBO₂) | 5.1 mg |
| 非解離成分計 | 45.2 mg |
溶存ガス成分
| 遊離二酸化炭素 (CO₂) | 0.0 mg |
| 遊離硫化水素 (H₂S) | 0.0 mg |
| 溶存ガス成分計 | 0.0 mg |
溶存物質計(ガス性のものを除く) 1.25 g/kg6
成分総計 1.25 g/kg
(ニ)その他の微量成分(mg)
6. 泉質
7. 禁忌症、適応症等は別表による。
42℃以上 → 高温泉。加水・加温なしで入れる「源泉そのまま」レベル。
100 L/分の鮮度目安にやや届かず。1日約84名分の入浴を新鮮提供。自然湧出のため動力揚湯ではなく、酸化等の劣化が少ない。
pH 7.5以上8.5未満 → 弱アルカリ性。美肌効果ありのレンジ。試験室再測定で8.51と微妙にアルカリ性寄り(湧出から少し中和進行)。
Ca²⁺ が 76.55%、Na⁺ が 22.88%。
いずれも 20 mval% を超える ため、両方とも泉質名に入る。多い順に「カルシウム・ナトリウム」と並べる。
SO₄²⁻ が 80.74% で圧倒的。20 mval% を超えるのは硫酸イオンのみ。
→ 陰イオンは 「硫酸塩」 1つで決まり。
1,250 mg/kg → 1,000 を超えるので 塩類泉カテゴリー(単純温泉ではない)。
ただし 8 g/kg 未満なので浸透圧は 低張性。長湯OK、湯あたりしにくい。
陽イオン(Ca・Na) + ハイフン + 陰イオン(硫酸塩) +「温泉」
→ カルシウム・ナトリウム−硫酸塩温泉
4軸タグで括弧書き → (弱アルカリ性・低張性・高温泉)
CONCLUSION
カルシウム・ナトリウム−硫酸塩温泉(弱アルカリ性・低張性・高温泉)
=「肌を仕上げる、優しめの高温湯」
◯ 浴用適応症
きりきず、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症
+ 一般的適応症(疲労回復・健康増進・睡眠改善 など)
◯ 飲用適応症
胆道系機能障害、高コレステロール血症、便秘
※ 飲用は施設の許可を確認
⚠ 注意
一般的禁忌のみ(特異な禁忌は少ない)。下痢時は飲用を避ける。
3行まとめ
CHAPTER 8
効能を引き出すには入り方も大事。「どう入るか」が「どこに入るか」と同じくらい結果を変えます。
必ず心臓から遠い足元からかけ湯。3〜5回かけて体を慣らしてから入る。心臓発作・脳卒中の予防。
入浴前後に コップ1〜2杯の水・お湯を。脱水と血液濃縮を防ぐ。アルコールは厳禁。
42℃以上の全身浴は10分以内。リラックス目的なら37〜40℃のぬる湯で長湯(副交感神経優位)。CO₂泉は34〜37℃。
10分1回より、3分浴 → 休憩 → 3分浴 → 休憩 → 3分浴 で同じ消費カロリーで体への負担を半減できる。
刺激の強い湯(酸性・硫黄)の後は 真水でかけ湯。逆に保湿系(塩化物・硫酸塩)は すすがず、タオルで軽く押さえるだけ。
短期で効果を出すなら2〜3週間の連湯を1日2〜3回。1〜2日では発汗の程度。湯あたりが出たら1日休む。
CHAPTER 9
※ 妊娠中(特に初期と末期)は 2014年改正で禁忌から除外。
CHAPTER 10
分析書や温泉紹介でよく出てくる用語をまとめて。覚えておくと旅館の説明文がスラスラ読めます。
CHAPTER 11 — LOCAL FOCUS
埼玉県秩父エリアの19温泉を、貴重なローカル資料から再構成。
火山がない秩父は 「鉱泉が主役の湯治場文化」。江戸時代から続く秩父七湯と、現代の主要温泉施設をまとめます。
秩父エリアの温泉
19
湯(旅館・日帰り含む)
秩父七湯(江戸時代〜)
7湯
現存3 / 閉館・廃湯4
主流の泉質
単純硫黄冷鉱泉
(火山がない地質特性)
美肌ゾーン
pH 9+
アルカリ性湯が多数
マーカーをタップ・クリックで詳細表示。 秩父七湯 現代の温泉 閉館・廃湯
© OpenStreetMap contributors / 座標は近似値を含みます
いずれも源泉温度の低い鉱泉。札所巡礼者の湯治場として古くから親しまれてきました。現存するのは 新木・柴原・白久(鹿の湯)の3つ。
No.1 / 七湯①
秩父市山田1782 / 文政10年(1827)開湯
効能: 神経痛・リウマチ・五十肩・皮膚病
秩父札所十郎義雄が札所巡礼の途中で湯浴みしたと伝わる。札所参拝の湯治場。
No.2 / 七湯②
秩父市浦山 / 文明15年(1473)開湯
効能: 神経痛・リウマチ・皮膚病・慢性消化器病・慢性婦人病
秩父七湯最古。第三紀層 中津川層群上部から湧出。札所巡礼の湯治場。
No.3 / 七湯③
秩父市荒川 / 江戸時代〜
効能: 神経痛・リウマチ・皮膚病・婦人病
江戸時代に三神社湯岩の湯場として発見。秩父札所巡礼の宿。2旅館で現存。
No.4 / 七湯④
第三紀層
効能: 神経痛・リウマチ・婦人病
2020年に閉館・解体。歴史的価値の高い秩父七湯のひとつだった。
No.13 / 七湯⑤
秩父市荒川白久455 / 昭和2年開湯
効能: リウマチ・神経痛・胃腸病・婦人病・痔疾
第三紀層の砕岩・砂岩の割れ目から湧出。フッ素イオン・メタホウ酸・メタケイ酸含む「たまご湯」。自家源泉「白久鉱泉」+小鹿野町の大龍寺源泉を補完利用。
七湯⑥
— / 昭和41年(1966)
埼玉県で最も古く温泉利用許可がなされたが、下久保ダム建設で水没し現存せず。
七湯⑦
秩父七湯の1つだったが現存せず。記録のみ残る。
秩父市・小鹿野町・皆野町・両神に点在。火山がないため多くが鉱泉(25℃未満)で加温して提供。
No.8
神経痛・婦人病など
No.9
秩父市山田243-2
神経痛・疲労回復・つるつる肌
「お不動様のお告げで発展したお湯」と伝わる、秩父札所巡礼の宿。横瀬川のせせらぎと緑の山並みを望む。日帰り入浴は不可(2025年確認)。
No.10
秩父郡 / ホテル美やま
神経痛・冷え性・慢性消化器病・慢性婦人病
公式 →No.11
秩父郡長瀞町 / 旧 花むら
神経痛・関節痛・冷え性・慢性婦人病
No.12
横瀬町横瀬4628-3
神経痛・筋肉痛・運動麻痺・慢性消化器病・慢性皮膚病・慢性婦人病
No.14
秩父市荒川白久 / 奥秩父白久鉱泉
リウマチ・神経痛・胃腸病・婦人病・痔疾
平将門・長尾景春の伝説あり。白久温泉郷から東500m。
No.15
小鹿野町両神小森707
神経痛・五十肩・慢性消化器病・冷え性・慢性婦人病・疲労回復
源泉名「両神温泉すずきの湯」フッ素・メタホウ酸含。小鹿野町営国民宿舎。
公式 →No.16
小鹿野町両神薄2380
No.15と同じ源泉。両神村ふれあいセンター内の温泉浴場。
No.17
小鹿野町三山243
神経痛・関節痛・筋肉痛・運動麻痺・胃腸病・婦人病
山中地清断層北線部の中世層の層理から湧水。大龍寺源泉を引湯。
公式 →No.18
秩父市上吉田3662 / 明治初期開湯
神経痛・皮膚疾患
「たまご水」と呼ばれる古生層中から湧出(13L/分)。
No.19
皆野町日野沢4000
神経痛・筋肉痛・運動麻痺・慢性消化器病・慢性皮膚病・慢性婦人病・糖尿病など。飲用適応症:糖尿病・痛風・便秘など
日本百観音結願寺 秩父札所34番水潜寺のふところに開湯。「天長元年の法泉」。
出典:NPO法人秩父の環境を考える会/山室由貴穂氏編「秩父地方の温泉概況」資料集(2026年5月収集)
CHAPTER 12 — INTERNATIONAL
2026年5月、西武秩父駅前温泉「祭の湯」で台北・北投温泉博物館との文化交流展が開催。
テーマは 「駅から浴場へ — 鉄道と温泉が共に営む地域実践」。これに合わせ、両エリアの温泉を比較してみます。
EXHIBITION
台北市北投区の文化施設「北投温泉博物館」が、秩父市の西武秩父駅前温泉 祭の湯で交流展を開催。 ユネスコ無形文化遺産に登録される「秩父祭」をモチーフにした祭の湯と、かつての公衆浴場から再生した北投温泉博物館 — 「入浴の場から交流の場へ」という双方の取り組みを共有する企画。
会期
2026.5.30(土) 〜 6.12(金)
会場
西武秩父駅前温泉 祭の湯
住所
秩父市野坂町 1-16-15
5/30 初日には「駅から浴場へ──鉄道と温泉が共に営む地域実践」日台交流トークイベント開催。鍾兆佳館長(北投温泉博物館)が、廃墟寸前から住民の力で再生した同館の歩みを語る。
両者は 生まれが完全に逆。これが泉質・温度・pHすべての違いを生みます。
SAITAMA
TAIWAN TAIPEI
| 項目 | 秩父(代表) | 北投 青磺泉 | 北投 白磺泉 | 北投 鉄磺泉 |
|---|---|---|---|---|
| 泉質 | 単純硫黄冷鉱泉 | 酸性硫酸塩-塩化物泉 | 酸性硫酸塩泉 | 中性炭酸塩泉 |
| 温度 | 25℃未満 | 50〜75℃ | 37〜40℃ | 40〜60℃ |
| pH | 9前後(弱アルカリ性) | 1〜2(強酸性) | 3〜5(酸性) | 6〜7(中性) |
| 色 | 無色透明 | 半透明やや緑 | 黄白濁 | 淡褐色透明 |
| 主な効能 | 神経痛・リウマチ・美肌 | 皮膚病・関節炎・リウマチ・婦人病 | 慢性皮膚病・関節炎・婦人病 | 神経痛・皮膚病・リウマチ |
| 体感 | ヌルヌル・優しい | ピリピリ・刺激強 | 硫黄臭・乳白 | 無臭・穏やか |
UNIQUE MINERAL
「北投石」は、北投温泉の湯花が 何千年もかけて石灰化し、微量のラジウムを含んで結晶化した鉱物。1905年、日本の鉱物学者岡本要八郎が発見し、台湾の旧名「北投(ホクト)」から命名されました。
PRODUCED ONLY IN
→ つまり日本と台湾は 地質学的にも放射能泉の「兄弟」。今回の交流展の背景には、こうした自然遺産の繋がりもある。
CHICHIBU
BEITOU
今回の交流展のテーマ「駅から浴場へ」は、両エリアの最大の共通点を突いています。
西武秩父駅
特急 Laview で池袋から約77分
建築家・妹島和世がデザイン。山々に囲まれた秩父盆地へ。駅前に「祭の湯」直結。
新北投駅(MRT)
台北中心部から約30分
1916年開業の温泉アクセス線が現代のMRTへ。駅周辺に北投温泉博物館・地熱谷・公共浴場が集積。
日本の秩父と台湾の北投、両方を体験してみたい人へのおすすめ:
秩父day trip
北投day trip
日台ペア湯巡り
出典:北投温泉博物館公式 / 北投温泉 Wikipedia / 台北市温泉発展協会
CHAPTER 13 — STATEWIDE
秩父エリアを飛び出して、埼玉県全域の温泉地・温泉施設を地図と一覧で。
伝統的な「鉱泉旅館」、近年掘削の「天然温泉スーパー銭湯」、両方を含めて視覚化しています。
県内 温泉地
31地区
環境省 令和5年度
県内 源泉数
117本
全国 27,932本の0.4%
特徴
山間部に集中
秩父・飯能の西部山岳
都市近郊温泉
黒湯・スーパー銭湯
川越・越谷・春日部など
秩父エリア(19湯) 飯能・名栗 比企・中部 北部 東部都市 南部
© OpenStreetMap contributors / 一部座標は近似値
おがわ温泉 花和楽の湯
比企郡小川町 / 2004年開業
「瓦屋の跡地」が名前の由来。「泊まれない旅館」コンセプトで開業し、2016年にカワラホテル併設。※休業中の情報あり。
玉川温泉(昭和レトロな温泉銭湯)
比企郡ときがわ町玉川 / 1991年開湯
1700mボーリングで源泉発掘。2011年から温泉道場が運営、「昭和レトロな温泉銭湯」としてリブランド。玄関にミゼットがお出迎え。
公式 →嵐山渓谷温泉 平成楼(重忠の湯)
閉館比企郡嵐山町 / 1992年開業
2000年に天然温泉化。鎌倉時代の武将畠山重忠から「重忠の湯」と命名。2018年2月22日閉店。
行田天然温泉 古代蓮物語
行田市 / 三浦層群源泉
1,000〜2,000万年前の三浦層群から湧出。隣接する古代蓮の里(数千年前の蓮の種が現代に蘇った)と同じ「古から現代への物語」が名前の由来。13種類の湯。
公式 →熊谷天然温泉 花湯スパリゾート
熊谷市 / 地下1500m自家源泉
埼玉県最大級の温泉使用量を誇る大型スパリゾート。源泉100%かけ流し含む露天・内湯10種類。
公式 →おふろcafé 白寿の湯
児玉郡神川町 / 2001年8月開湯
「99歳まで健康に」の願いから命名。地下750mから溶存物質35g/kg = 関東一の濃度。鉄分豊富で空気接触で茶褐色化、浴槽に千枚田状の堆積。温泉道場の温泉×カフェ業態。
公式 →おふろcafé ハレニワの湯
熊谷市 / 2021年9月リブランドOPEN
旧「おふろcafé bivouac」から「カラダと心が晴れる庭」をコンセプトにリブランド。温泉道場運営、23時間営業のサウナ施設。
公式 →春日部温泉 湯楽の里
春日部市粕壁 / 2004年12月開湯
地下1500mから自噴。湧出量320L/分。保温力高く「熱の湯」と呼ばれる。
ゆの華 越谷天然温泉 美人の湯
越谷市(国道4号沿い)
「化石海水」起源の黒湯。太古の海水が地下に閉じ込められて湧出、フミン酸(植物由来)で褐色化。メタケイ酸豊富で美肌効果、源泉かけ流し。
公式 →百観音温泉
久喜市西大輪 / 1999年掘削
会長の祖先が 板東・西国・秩父の百観音を巡って自宅に観音堂を建立。「観音堂跡には源泉が必ずある」と信じて掘削 → 的中。57℃・毎分1000L自噴、化石海水・石油臭・関東トップグレード泉質。
公式 →小江戸はつかり温泉 川越店
川越市渋井 / 国道254号沿い
地下1700mから湧出する源泉を使った2大浴場(さらさらの湯/ざぶーんの湯)と3種類のサウナ。小江戸川越観光の帰路に。
公式 →七福の湯 戸田店
戸田市喜沢南
オリンピック通り沿いのサウナ充実型都市温浴施設。
極楽湯 川口店
川口市
全国チェーン温泉。露天風呂・関東黒湯。
湯乃泉 草加健康センター
草加市 / 1988年開業
湯乃泉グループは1980年「相模健康センター」が日本初の湯治体験健康センター。草加店は1988年開業の「健康ランドの元祖」。サウナは1段目85℃・3段目100℃で、全国のサウナーが集う聖地。
公式 →各温泉の「なぜここで湧くのか」「なぜこの名前なのか」を集めました。物語性のあるものをピックアップ。
800年の伝説
承久年間(1219〜21年)、飯能の山深い名栗で 手負いの鹿が湯につかって傷を治しているのを猟師が見つけた ──これが名栗温泉の開湯。日本各地に類似の「動物発見譚」があるが、800年前から続く湯治場として今も 大松閣 がその系譜を引き継ぐ(創業1914年)。
観音信仰の的中
会長・白石氏のご先祖は板東33・西国33・秩父34=百観音をすべて巡って自宅に観音堂を建立するほど信心深かった。「観音堂跡には源泉が必ずある」と通産省・科学技術庁データを精査し、1999年掘削開始 → 57℃・毎分1000Lが自噴。日本温泉協会お墨付きの全国トップグレード泉質。
数千年の眠りから
1,000〜2,000万年前の三浦層群から湧き出す塩化物・炭酸水素塩泉。隣接する古代蓮の里では、工事で掘り起こされた数千年前の蓮の種が現代によみがえった「古代蓮」が咲く。「古から現代への物語」を温泉と植物の両方で体現する施設。
99歳まで健康に
「白寿(99歳)まで健康に」の願いから命名。神川町の地下750mから湧出する含鉄塩化物泉は、溶存物質35g/kg = 関東一の濃度、全国でも稀。鉄分が空気接触で茶褐色に変色し、浴槽周りに 千枚田状の鉱物堆積 を形成。視覚的にも稀有な体験。
関東平野の正体
春日部温泉・ゆの華(越谷)・百観音温泉・古代蓮物語 ── 県東部の主役は 「化石海水」起源の黒湯。関東平野が太古に海だった頃の 海水と植物が地下深く閉じ込められ、長い時を経て湧出。フミン酸(植物由来)で褐色、塩分豊富。「埼玉の海なし県は実は地下に海がある」と言える。
埼玉発の温泉ベンチャー
2011年、ときがわ町で創業した株式会社温泉道場(現ONDOホールディングス)。「お風呂屋から文化を発信/街を温める」を理念に、玉川温泉(昭和レトロ)・白寿の湯(神川)・ハレニワの湯(熊谷)・bivouac(本庄)・O Park OGOSE など、地域の温泉を独自テーマでリブランド。「おふろcafé」ブランドは全国へ展開中。
※ このリストは主要施設の抜粋です。県内には他にも多数の温泉・スパ施設があります。
出典:環境省「温泉利用状況」令和5年度/ちょこたび埼玉/各施設公式サイト
CHAPTER 14 — GENESIS
なぜ、火山も海もない埼玉に温泉が湧くのか。
答えは「地質が泉質を決め、地形が立地を決め、歴史が文化を育て、技術が平野へ広げた」という4層構造にあります。この章では、県内の温泉発達を地質・水文・歴史・技術の面から紐解きます。
※ 模式図。地下は深さ100mごとに約3℃温度が上がる(地温勾配)ため、火山がなくても地下1,000mで約50℃に達する(産総研 地質調査総合センター)。
日本の温泉は火山性と非火山性に大別され、非火山性はさらに「深層地下水型」と「化石海水型」に分かれます(神奈川県温泉地学研究所の分類)。埼玉はこの両方を持つ、非火山性温泉の見本市です。
WEST — 破砕帯浸透型(深層地下水型)
EAST — 化石海水型
| エリア | 地質 | 成因タイプ | 典型的な泉質 | 代表例 |
|---|---|---|---|---|
| 秩父山地 | 秩父帯・三波川帯(海成付加体) | 破砕帯浸透型 | 単純硫黄冷鉱泉 pH9± | 新木鉱泉・満願の湯・両神 |
| 秩父盆地縁 | 第三紀層(秩父盆地の海成層) | 破砕帯浸透型 | 塩化物・炭酸水素塩泉 | 白久温泉・柴原温泉 |
| 外秩父・比企丘陵 | 第三紀層〜古生層境界 | 浸透型+中深度掘削 | 強アルカリ単純温泉 pH10 | 玉川温泉・花和楽の湯 |
| 県北縁辺 | 神流川扇状地の深部 | 化石海水(高濃度) | 含鉄Na-塩化物強塩泉 | 白寿の湯(溶存35g/kg=関東一) |
| 東部平野 | 堆積盆地深部(1,000m級) | 化石海水型 | Na-塩化物泉(黒湯) | 百観音・春日部・越谷・行田 |
地質が「どこに湧くか」を決めたなら、歴史は「どう使われてきたか」を決めました。
中世 — 発見と伝説の時代
承久年間(1219-21)名栗で手負いの鹿が傷を癒す姿から開湯。文明15年(1473)には秩父七湯最古の鳩の湯。山の民が破砕帯から染み出す「効く水」を見つけていく時代。
江戸 — 巡礼×湯治の黄金期
秩父札所34観音が「江戸から近く、関所なしで回れる巡礼地」として大流行。秩父往還を歩く巡礼者の宿として秩父七湯が発達。結願寺(34番水潜寺)のふもとに湧く満願の湯はその象徴。冷鉱泉を薪で沸かす「沸かし湯治」文化が確立。
明治〜昭和 — 鉄道と「東京の奥座敷」化
秩父鉄道(明治期〜)、西武秩父線(1969)の開通で秩父は日帰り圏に。1948年の温泉法が「25℃未満でも規定成分があれば温泉」と定義したことで、秩父の鉱泉群が正式に「温泉」を名乗れる制度基盤が整う。
平成 — 大深度掘削が平野に温泉を生む
1990年代に1,000m級の掘削技術が普及(東京の掘削許可は1997年の90本から急増)。埼玉でも玉川温泉1991(1,700m)→ 百観音1999 → 白寿の湯2001 → 花和楽・春日部2004と、それまで温泉と無縁だった丘陵・平野部に続々開湯。「海なし県の地下の海」が姿を現した時代。
令和 — リブランドと文化交流の時代
ときがわ町発の温泉道場(2011創業)が「おふろcafé」で県内温泉を次々リブランド。祭の湯(2017)は駅直結型、2026年には台湾・北投温泉博物館との交流展も。温泉が「入る場所」から「地域文化の交流拠点」へ進化中。
結論から言うと、天候は「主因」ではなく「供給源」です。埼玉の平野部は日本有数の少雨地域(冬は乾いた晴天が続く)ですが、温泉の発達を左右したのは降水量そのものではありません。
♨ 埼玉は「火山がないのに温泉が多様」という、日本でも珍しい非火山性温泉の教科書のような県。
出典:産総研 地質調査総合センター「東京にどうして温泉があるの?」 / 神奈川県温泉地学研究所「火山性と非火山性温泉」 / 日本地下水学会(地下水のpH) / ジオパーク秩父 / 埼玉県立図書館「江戸の出版物と巡る秩父霊場」 / 温泉科学68巻「群馬県の大深度掘削泉」